エクストラパス
エゴの実がなりました。
エゴノキの名前は果実を口に入れると喉や舌を刺激してえぐい(えごい)ことから来ているそうです。
さて、バスケット用語ですが「エクストラパス」と言う言葉がございます。
直訳すると「余分なパス」と言う意味ですが、簡単に言うと、自分がシュートが打てても、自分よりもフリーな状態の選手を探しパスをする事です。
そして今年NBAファイナルを制したサンアントニオスパーズの代名詞は正にその「エクストラパス」です。
絶対的スターはいない為に、パスで繋げていき、確率の高いフリーな状態でのシュートを放ち、点を取りに行くのです。
そうすると不思議な事が起きます。
シュートに行くまでの過程で、5人全ての選手がボールを触る事もありますので、他の選手が決めたシュートが
まるで、自分の打ったシュートの様になり一体感が生まれるのです。
正に全員バスケです。
パスを回して回して回して…と、クルクル回していく内に、他のチームメイトとの間の垣根がなくなっていきます。
他のチームメイトのシュートは自分のシュートでもあり、自分のシュートは他のチームメイトのシュートである状態です。
自分も他人もない、全てが一体となった境地であります。
これは我々は目指す世界でもあります。
我々人間はどんなに優れていても、無常による老いがやがて来ます。
それは何人も免れる事は出来ません。
そういう自覚がない人は自らを苦しめ、時には醜態をさらし、他人に迷惑をかけます。
しかし、だからと言って無常に怯え不幸になれという事はありません。
俺だ!俺だ!と自己主張せずに、サンアントニオスパーズの様に、自我を抑え、他の存在を認め尊重し、協力し合う事で幸福になることが出来るのです。
「何だ自分の個性を殺すことか…」と思われるかもしれませんが、そうではありません。
自分の個性を活かし、幸せになるために、受け入れるのです。
無常を受け入れ、他の存在を受け入れるという事は、我々がいつまでも幸福に生きていく術(智慧)であるのです。
我々人間の中には一人で何でも出来ると言う超人のような人がまれにいます。
しかし、そんな人でも無常に逆らう事が出来ません。
そして、その能力の使い方によっては、人を幸せにすることは出来ません。
バスケで言うと、ワンマンチームですね。
自分ひとりでボールを運び、自分でシュートを打ち決める。
すごいことですが、周りにいる選手はボールにまるで触っていません。
「それでもいい」と口では言うかもしれませんが、本音はどうでしょう?
正直詰まんないでしょうね。
自分の存在を認めてもらえてない、もっと言うと誰でもいいのですから。
そんな中でプレーしてもつまらないでしょう。
そうすると、どんなに凄い能力を持っていても、本当の意味では認められないのです。
認められる為には認める事が大切です。
無常や他人の存在、すべて受け入れる事です。
それらを、より多く受け入れた人が「スター」と呼ばれています。