住職の日記

亀は本当は誰と勝負したのか?

亀は本当は誰と勝負したのか?

亀が卵を生むために穴を掘っていました。

なんかこの時期は皆それぞれ忙しいですね。

さて、「頑張れば何とかなる」「一生懸命頑張れば善いことがある」こういう言葉は

我々の活力になります。

しかし、途中で「あれっ?」となることでしょう。

そして「頑張っても報われない」「一生懸命やっても成功するとは限らない」「神も仏もない」などと

落ち込んでしまいます。

これも人としての心情ですよね。

しかし、現実は違います。

頑張っても成功しないこともあれば、反対に頑張らなくても成功する事もあります。

「じゃあ努力したって無駄じゃん」ってなると思いますが

そもそも何かを得るために努力すると思い込んでいる事が、既にこの世の真理から外れているのです。

この世は虚空、空っぽで何も無いのです、ということは得るのものも無いのです。

無いのに得ようとすることは、雲をつかむような話で苦しいだけです。

それを、報われない、成功しないと深く悲しんだり、悩むことは気持ちはわかりますが

何かを得ようとする時点で、既にお門違いなのです。

…では、何もない虚空の世界で何すれば良いのか?

したいことすればいいんです、命ある限りですけど。

何か得ても得られなくても続けていける事です。

義務的でもなく、強制されなくても、続けていくことも厭わない事。

それらは少々の困難があっても乗り越えていけますしね。

報われなくても、深く悩む事はありません。

しかし、「自分がしたいこと」と言ってやりたい放題してもそれはそれで問題大有りです。

虚空の世界でどうして自分という存在が生まれたのか?それは様々な縁の結集によって生まれたのです。

これを縁起の法則といって、この世が虚空であると知ったら、次に自分の成り立ちに目を向けるのです。

自分がこうして生きているのは、両親や祖父祖母、ご先祖様、親戚や地域の人…などなどいろんな縁が脈々と

つながっている事に気づくはずです。

そして、自分はその縁で「生かされている」ということにも同時に気づくはずです。

そうすれば、その人たちに、何すべきが一番いいのか?そして何が出来るのか?そしてその出来ることの中から

自分は何が、得ても得られなくても心穏やかに続けていけるか?

それが真実であります。

いくら好きなことでも、誰にも喜ばれないものでは続けていくことは難しいですからね。

…努力と亀と言えば童話で有名なのは「ウサギとカメ」ですよね。

簡単に要約すると、鈍足な亀が、俊足のうさぎに足が遅いことを馬鹿にされて

かけっこの勝負を挑み、うさぎが俊足なゆえに、途中で昼寝をして鈍足な亀が追い抜き

結果は亀が勝つという話ですが。

うさぎは自分の能力を過信し、そして亀の能力を見くびった事によって慢心が生まれ負けたのです。

ということは、途中から自分ではなく、意識が他に散漫し、自分がすべきことをしなかったとも言えます。

普通に考えれば、うさぎの圧倒的な差で価値です。

そして、亀はなぜそんな勝負を端から挑んだかわかりません。

まさか、うさぎが慢心して寝るなんてことは予測しなかったでしょうし。

つまり、相手が誰であろうと、勝とうが負けようが、愚直に自分の道を懸命励みましょうと

言う仏道修行の「精進」の大切さがこの話から伝わってきます。

つまり、亀の最大の敵はウサギではなく、己であるのです。

如何に差をウサギにつけられようと、己が辿る道を外れることなく歩めるか?

という勝負でもあったのですね。

ただ、我々が身を置く世界は資本主義の社会でもあり、結果が全てと言っても過言ではありません。

しかし、その結果ばかりを求めて、それまでの道のり(過程)を疎かにしてしまうのです。

そして、結果は過程ですから、その過程を疎かにして、結果だけを求めるということは

慢心うさぎになるということですね。

うさぎは普通にやれば、圧倒的な差で勝利できました。

しかし、あまりの亀の遅さに、油断し休憩して近くに来たらゴールすればそれでいい、と

勝てばなんでも良いと過程を無視して、負けたのです。

曹洞宗の開祖の道元禅師の言葉に「只管打坐 しかんたざ」という言葉があり

ただひたすらに座れという意味であり、「悟りたい」と見返りを求めて座ってはならんということですね。

我々で分かりやすく言うと我々がよく口にする「幸せになる為に生きる」ということです。

じゃあ「今は不幸なのか?」

と否定から入る考えを持っていけば、どこにいっても否定したりする癖が出て、環境変えても

恐らく一緒でしょう。

よって、その為には仏法に触れ、智慧を持たなければならないのです。

空を悟り、自分が生かされているという事に気づけば、まずは第一歩を踏めるのです。

後は、すべき事、出来る事、したい事を組み合わせて、自分の歩む道を作り

それを一生懸命こなし苦を度し、楽岸に至りましょう。

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