住職の日記

油を絶やすな

油を絶やすな

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玄関のすぐ傍のツツジの中にこんなスズメバチの巣が…。

真夜中に蜂には申し訳ないけど、取り除きました。

いつもよく通るところなので危なかったです。

この間刺された、手長ばちとは比べ物にならないくらい怖いですからね、スズメバチは。

しかし、全く警戒していなかったので、下手したらとんでもないことになってたかもしれませんね。

スズメバチは威嚇というか、人間にその存在を知らせるシグナルを送っているらしいのですが

さっぱり、わかりませんね。

本当に危険はすぐ傍にあるって感じで、身が引き締まりました。

今、暑さも和らぎホッと一息付く時期なのですが、油断はしてはいけませんね。

この時期はスズメバチにとって次世代の女王蜂、子育て蜂、雄蜂など育てる大事な時期なので

皆さんもくれぐれも気をつけてくださいね。

さて、ご存知の方もおられると思いますが「油断」という言葉の由来は様々あるのですがその一つに

天台宗の総本山延暦寺には、1200年以上も消えたことのない「不滅の法灯」があり

その灯りを絶やさないようにするために、油を注ぐ行為から、「油断大敵」と言われたそうです。

我々はついつい、楽な方へ楽な方へ、便利な方へ便利な方へと行きがちになっていまいます。

こうした毎日油を注ぐという行為も、合理的に考えたら「電気にすれば?」と言う考えに至りそうですが

すべてを合理的に考えてしまうと、「法灯」は耐えてしまいます。

天台宗を開かれた伝教大師最澄様は、山を開かれる際に書かれた、「山家学生式」という著書の中に

天台宗を開くにあたり「一隅を照らす国宝的人材」を育てたいと熱い思いが書かれれております。

「一隅を照らす」の一隅を調べますと一角、かたすみと言う意味を持ちます。

つまり、どんなことでも一生懸命に行える、つまり器、大法器の持ち主と言えるのではないでしょうか?

「時代は変わったのだ」と日本は特に新しい物好きという性格も働いてか、新しい文化は歓迎され

古いものは、取り残されるか、捨てられるのどちらかになってしまいます。

しかし、ここでそれを受け入れられう器が備わっていれば、古きも新しきも共に活かされて行くのでは

ないでしょうか?

そうした、器を広げるためには、一言で言うと苦難をどれだけ乗り越えられるのか?でしょう。

今は、携帯、ネットを使わない人はいないと思いますが、これは本当に便利です。

そして、買い物、チケット予約、調べ物、移動などなど、本当に快適に便利であります。

ただ、反対に特に仕事をしていく上では「考える」事が物凄く大切になっていくと思います。

何故なら、これから簡単に出来るものは、機械にそれも、人工頭脳を搭載した機械に取って代わる

可能性が高いに思います。

例えば、私もそうなんですがスケジュール表、今はほとんど携帯で、いつも書いていたカレンダーは

もうここ数年まっさらです。もう手放せません。

我々が住む世界は合理的な資本主義社会でもあるのです。

これを無視することは、平和ではありません。

というように、どんな時代でも大きな器を持っていれば、新しいから古いからと分別せず

いいところを活かし引き合わせて行くことが出来るのでは無いでしょうか?

ただ、引き合わすということは、簡単ではありません。

妄執に駆られている我々は本来一つのものが二つに見えているのですから

その認識されている「違い」に苦しみ、融合を阻みます。

ですが、簡単でないところに価値があるのだと思います。

特に簡単な便利なこの時代に。

最澄様の言葉に「道心の中に衣食あり、衣食の中に道心なし」という言葉があります。

これは道心を宿した人は、衣食住はその道を歩むために必要な分があれば満ち足りるのですが

反対に道心が無く、衣食住を求めれば、どれだけでも足りません。

というように、これは今の時代にもとても響く言葉でもあると思うのです。

我々は、物質的な豊かさを求めるばかりに、嫌いなこと面倒な事を省く傾向がありますが

が故に大切な物が失ってしまっていることになるのです。

しかし、それら便利な物が悪いわけでは無く、むしろ大切な視点であります。

なんて言っても資本主義社会にいるのですから。

ただ、そうした社会にでて、そうした一見不便な「考える」とか「向上心」などの

「道心」の灯りを支えている油が絶えた瞬間、何かが間違った方向にいくのです。

もっと言うと、その油は使い方を謝れば火事の原因にもなります。

いかなる時代に身を於いていても、「道心」の炎を絶やさず、油断せず油を足していきましょう。

そして、その行為で誰を照らしましょう。

今もこうして比叡の山で、灯りが灯され続けていると思うと心が豊かになります。

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