住職の日記

経験も初心を失っては…

経験も初心を失っては…

百日紅の葉が黄色く色付きました。

もうすぐ冬ですね。

落とし穴がある。経験はプラスにもなるが、マイナスになることもあるのだ。

<将棋棋士 谷川浩司>

人生は決断の連続です。

決断とは選択した事以外の事を捨てるという事です。

従って、どれを選択したかによって、その後の道が大きく左右される事は言うまでもありませんね。

そこで何が大切になるかというと、自身の過去の経験です。

その積まれた経験の層を通り、英断が出来るのです。

従って経験は素晴らしい物であります。

が、我々は経験を積めば積むほど、実績を上げれば上げるほど、自分でも

知らず知らずの内に傲慢になっていくのです。

その経験があることにより、慢心が生まれ、変なこだわりが生じ物事を正しく見る事が出来なくなるのです。

本願寺中興の祖の蓮如上人の言葉に「仏法は、知りそうもない者が知るぞ」とあります。

仏法を長く勉強していると、自分はこれだけやったんだという知識や経験から慢心が生まれて

知らず知らずの内に、とても仏道を志している人に見えなくなってしまう姿を、鋭く指した言葉です。

先程も申しましたが、経験は英断する為には必要です。

ですが、それと同じくらい「初心」も大切なのです。

従ってこの初心を如何に忘れない様、そして尚且つ経験を積む事が大切なのです。

よく、何の世界でもそうですが、初心者と言うだけで馬鹿にする人がいます。

その後は、お決まりの「最近の若い者は…」か「これだから初心者は…」です。

しかし、道心を忘れた経験者と、道心がある初心者、力は大体同じです。

この世は無常です。

常に世の中揺れ動いているのに、過去の実績にしがみついていても

もうそれが通用しなくなっている世の中になっているかもしれません。

自慢の宝刀(過去の実績から得た経験)も、磨かなければ錆びついてしまいますよね。

「宝は道心」と言いますように、道心を忘れてしまったら、それで成長は止まってしまいます。

止まるだけならまだしも、無常の風による風によって、劣化は避けられません。

この無常の風に力がない人間が唯一対抗できるのは「求道心」です。

無常を自覚し常に勉強やトレーニングすることにより、第一線にいられるのです。

ことわざに「初心を忘るべからず」という素晴らしい言葉があります。

その初心を忘れない為には、無常を自覚し研鑽し続ける事が大切になります。

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