住職の日記

火の用心 煩悩自己中火事の元


イチョウの葉が黄葉しだしました。

イチョウは水分が多いために、防火の木として知られています。

こちらは「亥の子餅」。

羽二重餅でできていて、小豆が猪の模様のところです。

コタツは旧暦の10月(亥の月)の亥の刻(今は11月の初め)に出すといいとされています。

陰陽五行説では亥は水性に当たるために、昔から火防として進行されているのです。

亥の月の亥の刻にこたつを出し、この亥の子餅を頂けば、火防効果バッチリですね。

乾燥して火災が多い時期でもありますので、しっかりと火の用心しましょう。

…「火の用心マッチ一本火事の元」という掛け声も聞こえなくなった昨今でありますが

火の扱いには十分に気をつけなければなりません。

しかし、我々が気をつけなければならないのは本当の火だけではなく

「煩悩」という火の扱いも気をつけなければならないのです。

この煩悩も使い方を誤れば身まで焦がしてしまう、恐ろしいものであります。

ただ、人間は火を巧みに扱うことによつて文明発展してきました。

危険でもありますが、進化していくためには必要なものであります。

それは、煩悩も一緒であります。

人が生きていく上で無くなることは無い、煩悩を無くしてしまおうとするのではなく

煩悩を正しく利用し、浄化させることが大切なのです。

その為には、その煩悩を使う理由(因)が大切になるのです。

それが、私利私欲の為に使おうものなら、大やけどは免れないでしょう。

このつくし合う世の中で、自分だけの為に生きて行くということは

ある種、自他共に「死」を意味します。

火事と一緒で、煩悩の炎は自分だけで済まないのです。

ですが、その因が「多くの人の為に」という、利他的なものであれば

煩悩は素晴らしいエネルギー、菩提心(悟りを求める心)となるのです。

そのエネルギーを利用し、多くの人々に施しをすれば自他共に豊かに幸せになるのです。

でも、なんで自分だけでなく他人を幸せを考えるのか?

それは、情けは人の為ならず 巡り巡って己が為と申します様に

自分の幸せの為でもあるからです。

自分の為に、人の喜ぶことをするのです。

当たり前ですが、自分が幸せでなければ、どうにもなりません。

しかし、その為には、自分の事を必要としてくれる人がいないと、続けれません。

自分の存在は認めてくれる相手がいることで成り立つのです。

ただ、自分の好きなことではければ継続は難しいですけど。

ですから、自分の好きなこと、そして相手の理解という二律背反の接点こそ

我々の目指すべき道なのでしょう(中道)。

その道を歩むことに、煩悩のエネルギーを活用すれば、なんの問題も無いのです。

つまり、「火の用心 煩悩×自己中火事の元」なのです。

いずれにしても、火と煩悩の利用には注意しましょう。

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