金木犀の花の芳香は…
境内を歩いていたら金木犀の花の良い香りが漂ってきました。
秋だなぁと感じますね。
ですが、この金木犀の強い芳香は時折「トイレ」を連想させるとも言います。
調べましたところ、昔汲み取り式トイレが主流の際に
トイレの側に植えて、その悪臭を紛らわしていたそうです。
ですから、金木犀と言うと、秋の訪れと感じると同時に、便所を連想される方も多いそうです。
…当山では写経会やご祈祷前に「塗香」していただくのですが
この「塗香」とは様々な香木を削って粉にしたもので、法要などの前に手や体に塗り
身口意を清めるというものです。
この塗香はインドより伝わったのですが、インドはご存知の通り熱帯地であるので
生活において様々な場面で悪臭が発生するのですが、こうした香の匂いで
心を落ち着かせて、「戒」を保っていたそうです。
…今は日本では下水などのインフラ整備も整い、そうしたトイレも減りましたが
何も「苦」そのものまで無くなったわけではありません。
従って、こうした苦の粉塵が舞うこの世界で、このような金木犀の芳香が
今もこうして、我々の心を落ち着かせ、安堵を与えているのです。
これらは、御仏の命の働きであり、仏様が我々に、この芳しい香りを与えてくださって
我々をその少しの間だけでも、確かな御仏の世界に誘ってくださっているのだと思うのです。
「香り」は密教でも非常に大切にしています。
香り一つで、その世界を変えることができるのですね。