皆で不退の地へ…
明日の写経会にお出しする菓子を買いにいつも行く和菓子屋へ。
店主がお茶を出してくださったのですが、一緒に出していただいた羽二重餅にとんぼの
模様がほどこしてありました。
そういえば、トンボがもう飛んでいていますからね、徐々に秋になりつつあるなぁと感じました。
トンボは「秋津」とも申しまして、日本書紀で神武天皇が山頂から国土を見渡した際にその様子が
秋津(とんぼ)がとなめ(交尾)しているように見えたために、古代では日本の事を「秋津島」と
呼んでいたそうです。
ですから、トンボは日本を象徴する昆虫と言えましょうね。
また、トンボは前に進み退かないことから、「不退転」の精神を表す虫とされ
特に武士の中では「勝ち虫」とされ大変大切にされていたそうです。
さて、「不退転」という言葉が出てきましたが、これは実は仏教語で
仏道修行の過程で、すでに得た境地から後戻りしないという意味があります。
つまり、慢心をせず常に謙虚に修行し続けるということです。
今は、特に選挙など勝負事の前に「不退転の決意」などと使われていて、どんなことがあっても志を曲げずに貫く
という意味で通っていますが、本来はこういう意味なんですね。
ただ、「不退転の決意」を履き違えると、それがエスカレートすると命を犠牲にしてでも、その目的の達成の為に
手段を選ばずどんなことしてでも貫くと捉えられて、その目的に執着するがあまりに命をも犠牲にする事もやむ無し
となってしまいます。
それは、仏教の戒律の中で一番厳しく戒める、「不殺生」に反します。
先程も申しましたように「不退転」とは執着を離れた穏やかな世界から、
戻らない為に修行をし続けることなのです。
その目的の達成の手段の為に命を犠牲にしてもいいなんて教えは仏法ではありません。
「そうは言っても理想実現の為には仕方ないんだ」と二言目には出てきそうですが
その目的の為に多くの命を犠牲にするのであれば、その目的を捨てるべきです。
遠くにあるかないかわからない桃源郷より、今の不退の地です。
それが最優先であり、その維持が最大目標です。
正しい「不退転の決意」をしなければならないのです。
間違った「不退転の決意」が出回ると、恐ろしい事になりそうです。
…今日は終戦から70年の日です。
国の為に犠牲になった命が、不退の地で安住せられることを心からお祈りいたします。
そして、我々もこうした事を繰り返さない為に、不退の地へ今生でたどり着きましょう。
このお盆の時期に前しか進まないトンボを見ると、どこか胸が熱くなります。